取材記事

【2020年書店事情】まだ、クリスマスプレゼントを決めかねている人たちへ

やっぱ、クリスマスプレゼントには本がいいな、と思う人が多いのではないでしょうか。

本だったら、なんとなくタメになるものという感じがするし、なんといっても、クリスマス自体がイエス・キリストの物語だし、キリスト教の国々はこの日の物語をいっぱい創って来ているし。

でも、いざとなると何を選んだらいいか、とても迷うのではないですか。

なんか選んだ人間の本質を見抜かれてしまいそうな気がして、ちょっと勇気がいるんじゃないですか。

そんな人たちに、書店のみなさんからのアドバイスをお願いしました。

 

【本はアートだ!と感性を刺激される空間】
ひばりブックス&カフェ(葵区鷹匠)

今年の9月にオープンしたばかりの鷹匠の本屋さん

静岡駅前の戸田書店本店が閉店した後、そこに勤めていた太田原由明さんが独立して開いた店です。

 

出版社や書店が低迷している時代に、なんと勇気ある決断なのだろうと感心しながらお話をうかがうと、やはり業界では「書店をやっていくのは無理だ」と見られ、本を仕入れることから苦労したとか。

それでも背中を押してくれる人もいて実現したとのこと。

人は人との出会いで希望を叶えられるものなのですね。

でも、本来の書店はこういうものじゃないかなと思える空間です。

 

小さな店構えに店主の選んだ本が並び、ふと立ち寄った客は気になる本を買うことで新しい世界に出会うのです。

店主の太田原さんはもちろん本好きなのですが「僕は若い頃、ちょっと背伸びして本を読んでいたんです。

自分の年よりむずかしい内容の本を読むとか。

 

そうして大人の世界を知りたいと思ったものです。今の若い世代にも、そんな読み方をして欲しいなと品揃えを考えています」と話す。

たしかに現代人は流行り物に弱いです。

そして読むのにラクなものを選びがちです。

みんながそうだから自分もそうするという人がほとんどです。

 

でも、必ず自分だけの価値観をもって人と同化できずに悩む若者が少数いるはずです。

この店は、そういう孤独な人たちの救いの場なのではないでしょうか。

「はい、本屋は少数派の人たちのためにあるものですから」という太田原さんの一言で、ますます確信を深めました。

 

店の奥はカフェスペース兼アートスペース。

12月27日までは「大贋作展」です。

贋作といっても、アンディ・ウォーホールやクリムトなどの有名作品を模写するのではなくパロディにしてあるもので、とても楽しいのです。

アートと本は合うので、店にギャラリースペースをどうしても設けたいと思っていたとか。

 

来月の予定は「マグとわたし」。

マグカップの作家作品の展示だけでなく、実際にカフェで利用できるという企画だそうです。

こんな進化系の書店が登場するなんて世の中捨てたもんじゃないなぁと喜んでいると、太田原さんは「始めることはできるんです。

でも、問題は続けられるかですね」と、大きな荷物を背負っているような風情。

いい店を支えるのはそのまちの住人です。

静岡はいい街だねと言われるように、私たち市民がちゃんと買い支えていかないと、と責任を痛感ました。

 

【ひばりブックス&カフェの所在地】

 

《クリスマスプレゼントにオススメの本》

『不滅の哲学 池田晶子』

亜紀書房/若松英輔/著 四六判272ページ・定価1700円(税別)

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『銀河の片隅で科学夜話』

朝日出版社/全卓樹/著 四六変形判192ページ・定価1600円(税別)

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『たいせつなこと』

たいせつなこと/フレーベル館/マーガレット・ワイズ・ブラウン/さく レナード・ワイズガード/え

内田也哉子/やく A4判・定価1200円(税別)

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『アリスの不思議なお店』

紀伊國屋書店/フレデリック・クレマン/著 鈴村和成/訳 B5判・定価2800円(税別)

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『キツネと星』

アノニマスタジオ中央出版/コラリー・ビッグフォード=スミス/さく スミス幸子/やく A4判・定価2800円(税別)

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【老舗書店は外商部が強み】
吉見書店外商部(葵区七間町)

静岡育ちの人間にとっては懐かしい吉見書店

私のように、静岡育ちの人間にとっては懐かしい吉見書店。

田中屋デパートが田中屋伊勢丹になり、静岡伊勢丹になっていったとき、その隣に吉見書店がありました。

教科書や学習参考書を扱っていたため、市内の生徒たちが必ず通った本屋さんでした。

私はシューベルトの「鱒」を聴くと吉見書店を思い出します。

店内ではいつもクラシック音楽が流れていました。

 

創業は明治12年。

吉見書店というと「札の辻」と思ってしまいますが、最初は安西や呉服町に店を構えていたようです。

そして札の辻、七間町へと移転して現在に至っているようです。

『駿國雑誌』という有名な静岡市の地誌があります。

全49巻77冊という大作を吉見書店が編集発行したのだそうです。

当時は書店が出版事業も手掛けたのですね。

 

戦後はリーダーズ・ダイジェスト社とタイアップして、ずいぶんモダンな店を構えたようです。

そんな歴史をもつ老舗書店は今、実店舗を葵区唐瀬街道沿いの竜南店と、駿河区東新田の長田店との2店舗で展開し、かつて七間町にあった店舗ビルも外商部としていまだに機能しています。

階下の伊勢丹の店の奥に出入口があり、エレベーターで4階に上がると吉見書店外商部があります。

他の書店と異なるのは、この外商部をもつことです。

 

外商部って何をやるところなのでしょう。

県内の大学・病院の学術書を扱っているのです。

学校での教科書や副読本、参考書の販売はもちろんのことですが、それらは決められたものを販売するだけ。

それよりも、大学や病院の先生方から注文を受ける学術書を調達するのが大きな仕事です。

 

そのことにより、各大学や病院の先生方と知己を得るという強みがあります。

外商部という安定した部門に支えられ、店舗では子供や若い読者層、主婦層に向けてイベントやキャンペーンを催し、コミックやキャラクターもの、料理本などをPRしています。

書店にサーティーワンアイスクリームが併設されているのも特徴です。

子連れや友だちと行くときには、ちょっと話したいね、とか、買ったばかりの本を早く読みたいね、なんてときに、アイスクリームを食べながら楽しみなひとときになります。

 

【吉見書店外商部の所在地】

 

《クリスマスプレゼントにオススメの本》

『あなたのことがだいすき』

KADOKAWA/えがしらみちこ/文・絵 西原理恵子/原案 四六変形判32ページ・定価1100円(税別)

えがしらみちこさんは、三島市在住の絵本作家で「えほんやさん」も経営する。

昨年の静岡書店大賞では児童書新作部門3位。

えがしらさん自身も小2の娘さんの子育て中。

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『ローカル女子の遠吠え』

芳文社/瀬戸口みづき A5判・定価619円(税別)

4コマ漫画のコミックだが、根っからの静岡人でなくても楽しめる。

転勤族で静岡に来た子育てママにぜひ読んでもらいたい。

瀬戸口みづきさんは静岡市生まれ、焼津市育ち、焼津市在住。

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『無人駅で君を待っている』

スターツ出版/いぬじゅん 四六判312ページ・定価1200円(税別)

天竜浜名湖鉄道が舞台、5編すべて泣ける。

著者のいぬじゅんさんは浜松在住の介護職。

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『おこりたくなったらやってみて!』

主婦の友社/オーレリー・シアン・ショウ・シーヌ/ぶん・え 垣内磯子/やく

B5変形判32ページ・定価980円(税別)

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『あつかったら ぬげばいい』

白泉社/ヨシタケシンスケほか 15cm×15cm64ページ・定価1000円

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【ママ同士でプレゼントし合うのもいい】
谷島屋マークイズ静岡店(葵区柚木)

谷島屋の中でも、もっとも子育て世代が集まる店舗

クリスマスプレゼントというとカラフルで綺麗な絵本と相場が決まっているような気がします。

が、そればかりではありません。

子育てママ世代同士でプレゼントし合うときには、ちょうど人生に悩んだり迷ったりしている事について題材にした本を選んであげるといいのではないでしょうかーーとアドバイスしてくれたのは、株式会社谷島屋のマークイズ静岡店店長の杉田貴彦さん。

 

ここマークイズ静岡店は谷島屋の中でも、もっとも子育て世代が集まる店舗とのこと。

クリスマスプレゼント向けの本が並んだ棚も用意され、店内はクリスマスムードいっぱいです。

たしかに、孫にプレゼントするのでしょうか、中高年のご夫婦が問い合わせに来たり、女性客が品選びしていたりと、子供たち向けのプレゼントが次々と売れていきます。

 

今年は前年に比べ1割以上も本が売れていると話してくれたのは、株式会社谷島屋営業本部の取締役営業部長・海野正浩さん。

コロナで在宅者が増えたせいなのか、はたまた『鬼滅の刃』ブームの煽りなのか。

どちらも影響していると海野さんはみているようです。

 

たしかに売れ筋コミックを買うことが目的で本屋さんへ足を運ぶ客は多いかもしれません。

が、一旦、本屋さんに足を踏み入れると、あれもこれも本が欲しくなるのです。

そのぐらい、最近の本はビジュアルでタイトルもユニークだったりストレートだったりして、人の心を魅きつけるものが所狭しと並んでいます。

 

一日遊んでいっても飽きないワンダーランドです。

それに気づいた人たちは、また「本屋さんへ行こう」ということになるでしょう。

そうして売上が伸びていくのではないでしょうか。

 

静岡谷島屋といえば、呉服町通りに店を構え、静岡人にとっては、新刊本の小説など何か面白い本はないかとのぞくのが楽しみだったり、待ち合わせ場所に使ったりと、存在感のある本屋さんでした。

が、ある日突然なくなって、どこへ行っちゃったのかなと思っていたら、パルシェやマークイズ静岡の中の書店となっているではありませんか。

郊外店としては流通通りに大きな店舗を構え、他に富士市や富士宮市、ららぽーと沼津など、県内に広く店舗展開しています。

 

また、浜松市・磐田市に広く店舗をもつ浜松谷島屋と統合しているので、かなり大きな組織です。

組織が大きいということはたくさん売ってくれるということなので、補充も早いはず。

話題の本をいち早く入手したいときには、こうした大きな書店へ行くといいでしょう。

 

谷島屋では女性をメインターゲットに考えています。

年齢を問わず、女性の家族や友人への幅広い話題伝達力に期待しているのです。

女性客が安心して来れる店づくりをしたいと海野さんは話します。

 

【谷島屋マークイズ静岡店の所在地】

 

《クリスマスプレゼントにオススメの本》

『子育てベスト100』

ダイヤモンド社/加藤紀子/著 四六判・344ページ・定価1500円(税別)

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『ずるい言葉』

WAVE出版/森山至貴 四六判208ページ・定価1400円(税別)

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『もっとラクに生きる!暮らしの整理術100』

エクスナレッジ/吉川永里子/著 A5判159ページ・定価1400円(税別)

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『子育て後に「何もない私」にならない30のルール』

文藝春秋/ボーク重子/著 四六判238ページ・定価1400円(税別)

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『パワーブック 世界を変えてやるチカラ』

東京書籍/ロクサーヌ・ゲイほか/著 A4変形判64ページ・定価1400円(税別)

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さて、違ったタイプの書店を紹介しつつ、クリスマスプレゼントのヒントになればと、この記事を書いて来ました。

クリスマスといってももう直前。

「なあんだ、もう買っちゃったよ」と怒ってる方もいらっしゃることでしょう。

申し訳ありません、気がつくのが遅くて。

 

でも、これからまだまだプレゼントの機会は続きます。

成人の日に、バレンタインデーに、桃の節句や五月の節句に。

今年は本をプレゼントしてみましょう。

 

本屋さんはそれぞれの個性で本を販売しています。

私たち買う側も、自分に合った本屋さんで、自分に合った本に出会いたいものです。

店主とゆっくり話をしながら見つけるもよし、イベントで見つけるもよし、話題の本を探しに出掛けるもよし。

あなたに合った本屋さんをぜひ見つけてください。

  • この記事を書いた人

Hirano tokiko

1956年1月23日生まれのもうすぐ65歳。 生まれも育ちも静岡市だが、両親に似て遠州人気質。 本業は書籍や雑誌の編集人で〜す。

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